国・企業など様々なパートナーが連携したWLBが理想

国によってキープレーヤは異なります

ワーク・ライフ・バランス(以下WLB)を推進する役割は誰にあるかという考え方をすると、個人・企業・国がいます。この三者のうち誰が中心役を担うかは、その国の風土や社会の成熟度によって大きく異なります。

ヨーロッパでWLBが格段に進んでいる理由は、社会保障政策や少子化対策の一環として、国が本腰を入れて様々な施策を行っているからです。

たとえば、「女性の社会進出と、男性の家事・育児への参加は、表裏一体である」という考えのもと、「パパ・クォータ制」を導入したノルウェーでは、男性の育児休業を義務付けています。このように、ヨーロッパは国主導型のWLBといえるでしょう。

一方、アメリカでは個人主義の考え方が定着しています。男性が会社に出かけづめで、「女性は家事・育児に専念して、家を守るのが仕事」と考えていたら、妻から離婚を切り出されるでしょう。アメリカでは、国民性に適した進め方として、個人主義型のWLBを導入しています。

それでは日本はどうすべきなのでしょうか。その選択肢の一つ目として、企業が主役となり、経営戦略を進めていく企業主導型のWLBが考えられます。もう一つの選択肢は、個人・企業・国の三社が連携し、都道府県や市町村などの自治体、NPOやNGO、社会保険士、中小企業診断士などのコンサルタントや教育機関が加わって、社会全体でWLBを盛り上げていくという方法です。

いずれにしても、企業は営利的存在としてだけではなく、社会的存在としてWLBを主導していくことが求められます。実際には、各企業が主体となって国をはじめとして様々なパートナーと連携して推進することが最も効率的です。

また企業においては、経営トップ、経営陣、管理職を分けて考えることが重要です。WLBの推進においては、会長・社長・オーナーなどのトップの熱意は必要ですが、事業責任を持つことが多いほかの経営陣は、トップと違う考えを持っていることも少なくありません。

管理職の役割も非常に重要です。WLBに限らず、マネジメントの課題として必ず管理職の存在が挙げられますが、職場の長である上司は、一人ひとりの従業員にとって、WLBを実現する鍵を握る存在です。このように社内外を問わず、様々な人物・役職を視野に入れて、阻害要因を取り除きながら、連携して推進していく必要があります。関連:企業業績にもたらす影響